BREAK RULES, KEEP ROOTS. 矛盾

What endures does not stay unchanged.

千利休の生地、堺。
その地に建つさかい利晶の杜で、古賀崇洋の個展「破・わびさび」は開かれていた。
この個展を訪れたのは、EASTBLUEの撮影を終え、その報告も兼ねての来訪だった。

古賀さんの作品と最初に出会ったのは、阪急百貨店のポップアップショップだった。
複数のアーティストの作品が並ぶ中で、ひときわ目を引いたのが、伝統的な陶器とは思えない光沢をまとい、器の表面を大小のスタッズのような装飾が覆い、頬鎧を模した盃まで備えた作品群だった。
後に知ることになるが、そのスタッズのように見える意匠は、螺髪など古代の装飾にルーツを持つものだった。
千利休への深いリスペクトを持ちながら、あえてその逆を行くように「反わびさび」を掲げる作家。その姿勢が強く印象に残った。

当時、こちらはEASTBLUEのイメージビジュアルをどうまとめるかを考えていた。
ハーフアルミ蒸着という、ボトルにミラーのような光沢を与える、日本酒としては前例のない工法を採用し、いわゆる“日本酒らしい”ビジュアルから離れる方向へ進んでいた時期だった。
古賀さんの酒器を見た瞬間、探していたピースがはまる感覚があった。
その場で主催のB-OWNEDの担当者に連絡先を聞き、ファウンダーへビジュアル採用を提案した。

惹かれたのは、デザインだけではない。
日本の伝統的な美意識や製法への理解と敬意を持ちながら、表現としてはあえてその真逆へ踏み込んでいく姿勢だった。
その点において、古賀さんの作品は、EASTBLUEが目指していた方向と確かに重なっていた。

こうした文脈では「再解釈」という言葉がよく使われる。
ただ、その言葉はどこか人為的で、ともすると意図的な操作やトリックのようにも響く。
古賀さんの作品も、EASTBLUEも、最初から“新しく見せよう”として生まれたものではないように思う。
受け継ぐべきものを持ちながら、時代の呼吸に合わせて形が変化していった。その結果として、いまの姿になったのではないか。

EASTBLUEを運営するCANWATERのスローガンとして掲げた BREAK RULES, KEEP ROOTS.
一見すると矛盾した言葉だが、実はそうではない。
ルーツがあるからこそ、破ることに意味が生まれる。
そして、変わることによってしか残せないものもある。
古賀さんの作品に触れたとき、EASTBLUEが掲げるこの言葉の輪郭が、少しはっきりした気がした。